
創造的な「IT作品」を生み出した学生のみなさん、地域や企業で活躍する学生の皆さんなど、ITジュニアの「今」を伝える当協会発のコーナーです。
◆多彩なテーマで競われた自由部門
優秀賞は石川高専「コエラリ!」に
第19回大会で自由部門を制した、詫間電波高専の「写動-シャドウ-」は、影絵遊びに現代の技術を組み合わせることによってその表現、利用可能性の拡大を目指したシステム。2台のプロジェクターを使ってスクリーンに投影された影を背後からカメラで撮影し、画像処理によって影の輪郭を抽出してアニメーション(動植物など)を生成、それをさらにレンダリングによってリアルタイムに描写するというもの。
「写動」が映し出す影絵は黒い影ではなくカラフルな影で、影絵に色をつけるという、新たで強力な表現力を持たせた。しかも、その影によってアニメーションを発生させるだけでなく、アニメ化されたカラフルな動植物などの影に、光によって映し出されたユーザーの影を干渉させて触れ合うことができるインタラクティブな影絵だ。すなわち、「写動」は実際の影とそれに連動した仮想影世界による影絵システムになっている。
会場ではアニメ化された犬に自分の腕の影で「おいでおいで」をするとその犬が動いたり、自分の影を使ってアニメ化された桜を桜吹雪として散らしたりするデモが行われ、詫間電波のブースは人だかりが絶えなかった。
チームのメンバーは、「影絵というアイデアは早い時期に決まったが、機能を欲張ったために技術的な課題を消化するのが難しく、作っては失敗の繰り返しだった。構想を実現することがこんなに難しいとは思わなかった」と、開発過程の苦労に言及。プレゼンとデモの反響から、最優秀賞も夢ではないと期待していたそうだ。
優秀賞を受賞したのは石川高専の「コエラリ!」。スクリーンに投影されるゲーム画面を見ながら大声を出すと画面上にオブジェクトが発生し、このオブジェクトをラケットのように使ってボールを相手コートに打ち返すラリーゲームである。プロジェクター・スクリーン、ヘッドセット、赤外線LED、赤外線カメラを駆使し、声と顔の角度・位置を利用する「コエラリ!」は直感的な遊びを楽しめる秀逸なアイデアと、プレーの楽しさが評価された。
また、特別賞には広島商船の「ピアノ☆マン-伝説のピアニスト-」(楽譜と指が一度に見られるピアノ練習ソフト)、久留米高専の「ikoi」(オンライン上でのグループプログラミング学習支援システム)、長野高専の「もじくるメガネ」(メガネ型ウェアラブルコンピュータ)、豊田高専の「金魚に恋して-金魚すくいシミュレータ-」の4作品が選ばれた。
【写真:最優秀賞に輝いた「写動-シャドウ-」のデモ風景】
◆目立った生活支援システム
HMDなど入力機器も多種多様
近年のプロコンでは、回を追うごとに新しいデバイスを採り入れる傾向が顕著になっているが、第19回大会では新しいデバイスの使いこなしに加えて、さまざまな周辺機器を取り込んでシステムを構成した、ある意味でよく練られたシステムが目立った。これらは、機器とその制御がセットになって商品化される産業界の動向を反映するとともに、プログラミングのサイドから意欲的にハードウェアを取り込んでシステム化しようとする試みとして大いに評価される。
さらに、テーマの拡がりが見られたのも今大会の特徴で、弓削商船高専の「Heartful Alarm」(心機能の異常検知通報システム)、小山高専の「わんど」(歩行者用道案内システム)、福井高専の「Welfit」(障害者の為のフットマウス)等に代表される、社会的な視座を持った生活支援システムが例年になく多かった。
今大会で目立ったデバイスはHMD(ヘッドマウントディスプレイ)で、小山高専、鈴鹿高専、金沢高専などが用いていた。センサーは使って当たり前になり、光・赤外線・温度湿度・加速度・角度・磁気・感圧と千差万別。変わったところでは、福井高専がWii(任天堂ゲーム機)の「バランスWiiボード」を入力部(フットマウス)に使い、豊田高専が3次元感触インターフェイス「PHANToM®」を用いていた。
また、最近では上位入賞校に固定化の傾向がある。全国大会に出場して勝ち抜くためには、学生や指導教員個人の才能・努力だけでなく、過去の経験やノウハウを次代に向けて蓄積・継承できた学校が上位入賞の常連校になっていく。それは作品の内容だけでなく、出場者の応募・選抜方法、テーマや課題のとらえ方、アイデアや企画の出し方、チーム編成、スケジュール管理に始まり、作品の検証と評価、マニュアルやプレゼン資料の作成、プレゼンやデモの方法と習熟など、大会までのプロセス全般に関わってくる。
高専プロコンの美点は、学生の自主性を尊重しつつそれを指導教員がサポートするところにあるが、それでも経験・ノウハウ・知的資産を次代に継承すべく蓄積できた学校とそうでない学校との格差は次第に拡大する。かつては、有力なクラブが存在しそのクラブを出場母体とする学校が上位を占めがちだったが、最近では出場者をそのたびに募る学校であっても優秀な成績を残すところが増えた。そこに、学校・学科・研究室としての経験・ノウハウ・知的資産の継承の有無を見るのは的外れではないだろう。
高専プロコンの全国大会は観て面白いし参加して楽しいイベントだ。出来るだけ多くの学校や学生がこの雰囲気を味わい、他校の作品から刺激を受けながら知的好奇心をかき立て、より上位を目指して競い合ってほしいと願う。
【写真:今大会で目立ったHMD=ヘッドマウントディスプレイ(金沢高専の作品、「ARiA」にて)】
◆次回の会場は「かずさアカデミアパーク」で
木更津工業高等専門学校 黒田孝春副校長(次回大会主管校)
高専プロコンを初めて観戦し、高専生のプログラミング能力の高さを実感するとともに、プレゼンやデモにおける説明・対応が上手であることに感じ入った。また、課題・自由・競技の3部門にまたがる大会運営の幅広さ、規模、スタッフの人数、ノウハウなどが予想以上であったことに驚いた。今大会では学生とそれを支える指導教員、大会関係者の熱意と真剣さが、たいへん心地よく感じられた。
次回の大会はプロコン創設から20回目を迎える記念大会となるが、主管校としては、プロコンの歴史によって育まれた良好な関係をいっそう発展させるアットホームな大会運営を心がけていく。そのためにも、プロコン委員の先生方と主管校の連携を密にしながら準備を進めていくつもりだ。
当校は機械工学科・電気電子工学科・電子制御工学科・情報工学科・環境都市工学科の5学科構成で、情報工学科と電子制御工学科が中心となって大会の準備を行うが、OBやOGにも協力を呼びかけ全校一丸となって運営に当たる。なお、記念大会の目玉として「パソコンの父」と呼ばれるアラン・ケイ(Alan Kay)先生に、プロコン大会に向けてのメッセージを頂戴する予定だ。
木更津の地は、古事記にある「きみさらず伝説」から地名が発祥したと言われるほど歴史のある街で、会場に予定している「かずさアカデミアパーク」は、エレクトロニクス・新素材・バイオなど、先端技術の民間研究所を中心とする研究開発拠点であり、豊かな自然に囲まれている。そうしたことから、記念大会では環境にちなんだメッセージを発信したいと考えている。
【次期主管校として挨拶する、木更津工業高等専門学校・黒田孝治副校長】
(2008年11月20日掲載)
取材・文/写真 佐々木 潔
◇関連動画
【「第19回高専プロコン」ダイジェスト Part 1】
(映像提供:全国高等専門学校プログラミングコンテスト委員会)
【「第19回高専プロコン」ダイジェスト Part 2】
(映像提供:全国高等専門学校プログラミングコンテスト委員会)
『ITジュニアの広場チャンネル@YouTube』
◇関連記事
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課題部門は米子高専、自由部門は詫間電波が制す
◇全国高等専門学校プログラミングコンテスト公式ホームページ
コメント (0) | トラックバック (0) 2008年11月20日 13時11分
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